小柴家の風景
'08年 1月 「冬 大好き!」

「 人件費 役員報酬だけ 除外 」

北海道より 小柴です。
冬 真っ盛りですね。
当地は 旧正月で大賑わいです。

多くは語れませんが
田舎の経営者とは
概ね上記なようで
まず 「社長」という言葉への憧憬は
半端なものじゃないようです。

それはすなわち
自らのステータスにもなるわけで
北海道用語で言う
「力がある」人たちへの
憧れや持上げ方は
悲劇的な自虐ともいえます。



現場とか経営はどうでもよく
地縁、血縁で事情通となり
効率化と合理化を区別せず
端的に言えば
水揚げ命の社長さんたち
北海道にはそういうおじさんたちが
ごまんと居ります。

「 ラーメン屋 どんぶり勘定 さすがだね 」
シャレで済めばいいのですが…



何故こんな書き出しかといえば
地域の会社経営を眺めていると
人の業の侘びしさを
感じるからなのです。



せっかく法人化しているのに
観念は個人商店のまま だったり

せっかく人材を集めているのに
人事は親分子分のまま だったり

役員は社長家族で
それ以外は正社員なしの
全員アルバイト だったり

人件費削減のために
従業員給与は不規則に操作しても
役員報酬はアンタッチャブル だったり

営業から現場、経理にいたる
全ての決断と責任はアルバイト だったり

などなど
まるで百年前の開拓期
タコ部屋労働の頃のような
原始的な経営感覚が
いまだ北海道経済の実情です。

北海道で「社長」は エライのです。
みんな社長になりたがります。
だから不況なのです。



それでも
冬の北海道は
楽しいのです!

スキー場関係の仕事は
楽しいのです!
タコ部屋感覚さえ忘れて
心の眼を開けていれば
北海道の毎日は
新鮮な時空を見つけられる
とても楽しいエリアです。

光のコントラスト
色のグラデーション
ホワイトアウトの恐ろしさも
目を閉じて 息を潜めて
心の眼で見渡してみると
生きている事を実感する演出です。

「生きててよかったぁ!」
と、素直に呟ける一瞬が
そこかしこに散らばっています。
だから
「冬 大好き!」

生きてる事自体が恵みであると
実感するような冬の情景を
一つずつ紹介していきます。
少々お立ち寄りくださいませ。





1.やっぱり冬なんだね




新年を迎えて
雪も寒さも 本格化
シャキーンッ!
とした朝が 頻出します。



くもり?
いえいえ
凍れた朝は こんな感じ
天上は 晴れています。
−10℃を下回ると
ダイヤモンドダスト現象があるので
地上付近の大気は
モヤッとした感じになります。



山への道
冷えた雪は 音を立てます。
キュッ キュッ
まるで片栗粉を握ったような
泣き砂を踏んだような
キュッ キュッ キュッ て
音が立ちます。
滑らない雪の 証拠です。

だから そんな日は
車も目一杯 踏んで行けます。
(ブレーキじゃなく アクセルをね)



凍れたと思ったら
雪も降るしさ
やっぱり冬だよね
ゲレンデもいい感じになるんです。



道路上の キマロキ編成
これを拡幅作業と言います。

ラッセル車で次々除雪していると
道路わきに雪がうず高く盛り上がり
もうラッセル車が機能しなくなります。



そこで一旦 道路わきの雪を崩して
道路上に取り込みまして
ロータリーで吹き飛ばすんです。
そして散らかした雪を掃除するように
最後尾からもう1回ラッセルが
付いていくのです。



彼らの作業を見ていると
まさにコンビネーションの業
互いの役目を認め合っているかんじ

もっと凄いのは
この キマロキ編成の前後に
必ず交通誘導員が付いてます。
時速8kmほどで移動していく編成の
前後を駆け足で追従して
無線で連絡取りながら
ニンジン棒を華麗に振って
安全確保に努めます。
この彼らが 凄いのです。
写真 撮れてないんですが
ごめんなさい。
でも凄いんです。





こちらは 敷地除雪
1ヶ月6〜7万円ほどで
降雪に応じて除雪していきます。



時には このように
オペレーターと打合せ
手作業の限界を助けてもらいます。







ラッセルだけじゃなくて
こうやってスクレープするのも
大事な仕事なんです。
雪ってね
踏んづけられると
氷になるんだよ。
知ってる?



バッフルを
上下前後左右の3自由度
自由自在に操作して
そうやって削って集めた塊りを
一気に雪溜場へ 押し寄せます。
さすが機械力です。



地球温暖化
これも一因ですか?
でも山手線の電車1本を間引くだけで
相当なエネルギー換算が出来ると思うのですが
いかがお感じでしょうか?
わたしたち
これを手でやっていたのです
10数年前まで。



静岡に居た頃に 言われました。
北海道民を全て本州へ移住させれば
無駄な税金もCO2も減らせるよね、って。
わたしたち
ここに住んでちゃいけないんですか?
お願いしますね
北国には 北国の生活があること
皆さん 認めてください。







2.スキー授業



きょうも イイ予感…

軽く凍れたし
風は止まっている
層雲の上は
スカッと晴れているし
レッスン忘れて 滑りたい



雪山は 紫に染まります。
真っ赤というよりも
青味が掛かって
とても深みのある
紫に染まります。

と、感動しているのはともかく
非常にヤバイ連中が
居るのです。
まったく危機意識が無い
自殺したがっている連中が
居るのです。



ボーダーだよ
スノーボーダーだよ。
ここ、雪崩の超危険区域なんだよ
よく 見て!
稜線上に雪庇があるよね
これ、落ちるんだよね
するとこの斜面が全面雪崩
逃げ場なんてあるわけないし
たぶん春になって
カラスやキツネにむしられた
むごい物体として
見つかるんだよね。

ボーダーって どうして
世間を無視するんだろうね
彼らの事故の際には
出動する捜索関係者は
みんな地元の人たち
家族を背負って 生活を支えて
本気で雪と向き合っている人たち
その人たちが
二次災害の危険に身を晒しながら
一生懸命 掘ってくれるんだよね
どう思うんだろう
そんなことを、ねっ。





それはともかく
九州はじめ西日本一円から
高校生の修学旅行が
やって来ます。

こんなに大量の雪を見るのは
初めて!
大量、なんてものじゃないよね
海の水を大量 と言うのに似ている。
スキー場に到着してから
しばらくは大はしゃぎです
ほんと、幼稚園の頃のように
無邪気に はしゃぎ回ります。



一班で10〜15名を受持ち
全く初めての高校生に
スキーを教えます。
けっこう色んなスキルが求められます。

例えば
スキー技術(あたり前)
デモ能力(魅せてなんぼ)
統率力(束ねられないとね)
伝達能力(理解させるかな)
危険予知能力(直面させず回避)
エンタテイメント能力(結局楽しくないとね)

2日間 事故なく終了した時
ほんとに力が抜けるほど
ガクッと疲れるものです。
スキー場では
自損事故だけじゃないので
ある意味 運もあるので
緊張感はかなりのものです。

でもね
最初は白けていた生徒すら
みんなと一緒にハードルを乗り越えると
終盤は連帯感が出てきて
自律された暴走?というか
責任範囲内で楽しむ術を
みんな覚えます。
イントラとの信頼関係も出来上がり
名残惜しく講習終了
と、なるものなんです。



こちらは モイワスキー場
がらーん…
誰も いなぁーい…
小学校のスキー授業が
こういうところで
行われます。



リフト乗り放題!
みんなで バンバン乗りまくり
で、もっと凄いのが…

くぉれだぁ!
ワン ツゥ スリ!



新雪 滑降!
ハードパックバーンの上に
夜間に積もった新雪20cm
ほど良い抵抗と浮遊感

小学校の授業で
こんなことが日常茶飯事
これって
やっぱ スゲェ!
と、心底思うのです。

そして レッスン隊形を自然と作れる
そんなのも
実は スゲェ!
これはすでに
文化の領域と思います。



大変なのは 引率教師
小学校高学年ともなれば
相当のスピードに上がってます。
一番後ろから
追い上げるのか 縋るのか
微妙な距離感で
子供と一緒に滑ります。



冬は寒いから イヤ!

静岡在住の頃
北海道出身を知られるたびに
こう言われて寂しかった。
北海道 ⇒ 冬 ⇒ 雪 ⇒ 寒い ⇒ ヤダ!
そこを良く知らない人に
決め付けられ
なんか 差別されたような
寂しさを感じていた。

でも 見てみて!
この人たちに悲壮感を感じるかい?
暗澹たる雰囲気を感じるかい?
寒くなきゃ 雪は降らんし
雪が降らなきゃ スキーが出来ん
子供たちはね
スキーが大好きなんだ
だから 秋になって
雪の匂いが近付いてくると
「スキー いつ出来るかなぁ?」
って、しょっちゅう聞いてくるんだよね。

人間は 環境に適して
成長し 進化するもんなんだよ。
吹雪のスキーで
顔が凍傷になっても
楽しみ方を見つけるんだよ
教えなくてもね。

冬、大好き!







3.カービングスキー



よく聞く言葉でしょうが
なに? それ

現代のスキーについて
少々解説いたします。



正面から見た
カービングスキー
スキーのセンター部が
極端に空いているのが分かりますか?
トップとテールはくっ付いているんですよ
これでも。

これが その重要なところ
です。

くびれた板が傾くと
くびれ部分が宙に浮く
その隙間が埋まるまで
板はスキーヤー自身の遠心力で
撓んでいく
結果、板側面の接地線は
顕著な円弧形状となり
板はその円弧に従い
滑っていく

つまり
昔日の平板スキーが
「弱ドリフト走行」ならば
今日のカービングスキーは
「完全グリップ走行」と言えて
自分でバンク面を作りながら
コーナリングフォースを生み出す
まるでインディアナポリス・サーキット
のような旋回です。




裏を返すと
こんな感じ。
真ん中のくびれが
ハッキリしているでしょ?



しかも、ねっ
いまの滑走面には
溝が切ってないんですよ。
以前は直進性向上などと言って
中央に丸い溝があったのですが
いまは滑走力向上のため
接地面積を出来るだけ広くしようと
そして直進性の重要性が失われたために
このようなまっ平らな滑走面となりました。



エッジは 大きくなってます。
断面が 縦長になってます。
板が傾いて走り続けるので
接地は側面で大きくなるからです。

スキーは殆どの時間
傾いているのです。


レーシングカーと同じですね。
(直線走行は殆どありません)





板の片側面だけ接地させて
グーンと撓らせるわけですから
板が捻れるんですよ。
撓り と 捻れ
それに振動
この3つの応力にどう対応するか
この間まではダンパーを付けたりして
外力で抑える傾向でしたが
最近は断面形状の工夫で
内力で抑えるのが主流です。

色んなところに
色んな段差(つまりリブ形状)
が作られており
応力を均一にするよう努力しています。



テールのホップ
古ーい技術ですが
これが発明されてから
スキーの速度は一気に上がり
しかも これに代わる技術は
まだ見つかっていない。
テールエンドのせん断抵抗が
グーンと抑えられる
単純ながら
原則の技術です。



そして
ビンディングと板の間に挟まる
このプレート。

スキーヤーの足から加わる
板を撓ませる荷重を
きれいに分散させて
板の曲げ応力を均一にする
それが このプレート

あと追加メリットで
靴底が上がるので
スキーヤーの倒れ込み動作が
クイックに強調できる
通称「ゲタ」の役割もあります。



プレート自身も
両端固定のみで
中間部はフリーで
スロットが切ってあります。
撓み差による周長変化を
上手に逃がすために
です。



「単なる 自己満足なんじゃないの?」
う〜ん、確かにそうかも。
でも数世代の間を置いて見比べると
やはり確実に進化している。
技術の蓄積とは
そういうものであり
例えスキーと言えども
種々のダイナミックスが
細かく盛り込まれていて
見るものを飽きさせません。
(私はやっぱり 開発好きなのかな)







4.ショップ


レンタルショップが
今年からリニューアルオープン
ビッグでナイスな
ショップへ進化しました。



某ホテルのスキーセンター
その一角に間借りして
新たな営業拠点を設けました。



看板が ダッサイのよねぇ。
反省事項なんだけど
私は所詮 アルバイト
言うだけ損する立場なの。

ビデオ上映で
デスクの雰囲気を盛上げます
それを見た各年齢層を観察するのが
密かな楽しみでもあります。
その年代によって頼る理論が様々で
昔むかーし 私が幼稚園だった頃
母親に聞かされた理論に
ここで再会することもあります。
(戦前の理論ですけど)



おいで おいで
グッズがいっぱい 待ってるよ









これらも 手入れを怠れば
あっという間に滑らなくなり
レッスンに支障が出ます。

包丁と一緒です。
下手だから
滑らない板でよいのでなく
下手だから
滑る板がよけい必要なのです。
スキーのリアクションを確かめるために
滑る板でなければ
初心者はコツが掴めません。

だから 返却のたびに
滑走面とエッジは点検され
相当な頻度で
再チューンされています。








5.闘い終えて 日が暮れて





きょうも一日 ご苦労様でした
事務所の軒先には
仕舞い遅れたスキーが
ポツンと置かれており
ひとまずの放心を
自然に表しています。



日程表には
団体予定がビッシリ
ハイシーズンの個人客
オフシーズンの団体客
その相互補完で
収益の安定が確保されています。

我がふあーむの営業にも
参考になりますわい。

多い日には
インストラクター50名
団体客400名超を
8名ほどのスタッフで
切盛り致します。
システマチックと言うよりも
阿吽の絡みで
綱渡り運営です。

駐在期間中にイギリス人から
指摘されたことがあります。
「日本人の運営はアマチュアだ」
色々な局面で思い出す指摘です。
その根拠は単純です。
仕事が個人から分離されておらず
責任の所在が不明確である。
納得です。

ただ阪神淡路大震災のときに
イギリス人から
訊ねられたことがあります。
「リーダー不在でなぜ混乱しないのか?」
確かに不思議です。
実際は混乱しているのですが
何気に落ち着くところに落ち着く
そういう結末になるのです。

思うに我々は
やっぱり農耕民族であり
しかも稲作文化が根底にあるからなのです。
集落営農が不可欠な稲作
それを永続させるためには
様々なしがらみや掟があります。
阿吽の呼吸で落ち着くのは
その抜き難い習性ゆえと
半ば諦めがちに思うのです。

わたしは
欧米式決定手法が好きですが…。



数百名の団体名簿
インストラクター用に再編集
うちの親方と副親方が
コツコツとやっております。
このふたり
とても仲の良い夫婦で
副親方のプレッシャーと
親方のあやしが
絶妙なコンビネーションとなっています。

我が夫婦もあやかりたいと
日々反省の次第でありますが
我が夫婦は同い年
どうも同じようなトーンになれないのです。
同い年の喧嘩は
足を止めてのガチンコになりやすい
疲れる喧嘩となります。

親方夫婦は
10歳ほど離れている
はずです。



闘い済んで 日が暮れて
光のコントラスト
色のグラデーション
まずは生きている事を実感しながら
明日はいい日かな?
と呟きながら
疲れを葬ります。








今月もありがとうございました。

シーズンオフの間は
自分の経営から外に出て
勉強する時間になります。
また自分の考えを
確かめる機会にもなります。
いったい自分達は何がしたいのか
何が出来れば満足なのか
何が出来なければ耐えられないのか
アイデンティティーなるものを
再確認できる期間です。

経営は言うに及ばず
人は生き方においても
自身に問い直すことによって
見失いそうな自己を
維持できます。
たしかに年中通して農家で食えれば
こんなに幸せな事はない。
でも一種の出稼ぎを経験しながら
世間や他人を知ることが出来て
自分達がより確かなものとなれる。

そう考えれば
アルバイトも満更じゃないのです。



あと2週間半で
農家に戻ります。
今年の冬も昨年に続き
小雪暖冬気味で推移しています。
たぶん、ハウスが埋められることは
なさそうです。

あたまの中は
営農準備や確定申告のことが
徐々に占め始めました。
「あれって、大丈夫だったっけ?」
「そういえば、苗の注文は?」
「いっけねぇ、免税軽油の申請忘れてた!」
などなど

生活の区切りを持てそうにないな
などとぼやきながら
気持ちは少しずつ
今年の経営へ向きつつあります。
皆さんに満足して頂いて
一人立ちしたいと誓うのです。



次回報告は3月上旬
ハウスの除雪が一段落した頃でしょうか。
無事故で作業が進む事を願いながら
今月の報告を終わります。

それでは また
来月お会いしましょう。







 
発行    編集局 制作責任 小柴孝志
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