小柴家の風景
'06年11月 「一会(いちえ)」

「知らぬ間に 一会一会で 一期為る」


北海道より 小柴です。
お元気でしたか?
当地ニセコは 12月に入り
きれいサッパリ 冬突入です。
ここ4日間 毎日
雪 吹雪
一気に根雪です。

遂に来たかぁ
待ってましたぁ
いよいよだなぁ

この冬と 来春へ向けて
気持ちが引締る
いま時期です。



秋頃にも記しましたが
季節は全て連なっている
特にいまの商売では
春夏秋冬の
どこが区切りなのか
分かりません。
全ての作業は次工程のため
全ての準備は前工程で…
技術者時代に習ったことが
最も集約される商売
その一つが 農家です。



今月のテーマは
「一会(いちえ)」

一期一会
使い古された言葉ですが
いまの商売に身を投じてから
一会の重要さを 痛感します。
秋仕事の総仕上げは
一年のまとめと 来年の構想

道に迷いかけたら
人に会え 歴史に聞け

人生にGPSは無いけれど
衛星のような先達諸氏が
絶対位置を示してくれる。

そんなGPSな一月を
今月はご覧下さい。







1.当たり前





秋も深まり 山は色付き
小柴ふあーむが 消滅しました。



この時期に
手入れの差がキッチリ現われる
それが アスパラ



今年は雪が遅く
平均気温も高めで
霜が一回一回
丁寧に当たったので
養分転流には 好条件でした。



アスパラの先生 中屋農園
そこのじいちゃんに
言われた通りに
丁寧に管理したら
じいちゃんと同じ色が出た

当たり前を
  当たり前にやれば
当たり前になる

いや じいちゃん
そりゃそうだけど
それの難しさを
いちばん知ってるのは
じいちゃん、あんただべさ



アスパラは
春の収穫が済んでから
茎を立てて 葉を拡げて
光合成を 始めます。

夏の間
同化養分で 根を伸ばし
貯蔵庫を 膨らませます。

秋になり 霜が降り
夏に伸びた 根の中に
同化養分は 貯蔵され始めます。
すなわち 転流です。

転流・貯蔵された養分が
来春に収穫される
新芽となります。



例えば 今年定植した
新株も同じこと
来年の育成は
今年の管理で変わります。

アスパラは
秋に枯れる前に
脱色します。
枯れる時は
茶色
脱色する時は
黄色
もしご自宅周辺に
アスパラ畑があれば
よく見てみましょう。
そちらは 茶色ですか?
透き通る黄色ですか?



「大丈夫かな  大丈夫かな」
年から年中
口癖となった この言葉

当たり前になってくれた
今年のアスパラ
でも
自分が当たり前を
したというよりも
アスパラが当たり前に
会わせてくれたような
なんとも恐縮な気持ちです。







2.恒例行事?



そうです
暗渠工事です
去年もやってましたね!

今年は新たな情報をもとに
バージョンアップした
暗渠工事をやりました。
名付けて
「バージョンアップ暗渠工事」
…すみません



航空写真で畑を見ると
水の浸透方向が
見事に浮かび上がってた
水抜き というより
縁切 が必要
そう狙いを定めて
いざ計画!

今年休ませた改良畑の
イメージ図です。
左端を上から下に向かって
用水路が流れています。
素掘りで 防水していません。

用水路から浸透した
余分な水が
畑の下へ入り込み
乾きずらい畑にしている
ように見えます。

そこで 縁切です。


去年施行した
アスパラ畑も
例外ではありません。

図中左上を起点に
浸透水がありそう
追加暗渠を 入れます。


バージョンアップのポイントは
1.急所を徹底的に
2.効果的に最小限に

さて さて うまく行くだろうか?



施行期間は 4日間
雨がちな 秋の合い間
施行完了の その夜から
雨が ザァーッと
土砂降りになりました。
圃場は かくも見事に
水浸し
滑り込み セーフで
施行完了



写真 右奥が
浸透水の起点
右奥から左手前に向かって
ジワジワと浸透している
ように見えます。



その浸透水の起点
写真 右手前から
左奥に向かって
ジワジワと浸透している
ように見えます。



軽トラ キャリィが
小さな背中に あおり増設し
籾殻山盛り乗せて
大奮闘した 足跡

スタックした時のために
トラクターが常時待機
最悪を想定した運転
一度止まったら最後
バックで全開全速
リミッター当りっ放し
目標に向かって躊躇無く
ただただ 勢いで乗切る



下に隠れる大岩避けて
しかし目標は見失わず
ひたすら前へ 前へ
深さ80cmの苦闘





軽トラ キャリィ
よく頑張った



ボディアンダーの泥除けが
千切れ飛ぶほどの過激さ
タフな使役に良く耐えた

おまえ 大丈夫か?



緩い畑を改良する
でも緩いから改良しに入れない
卵が先か 鶏が先か
そんな闘いを一緒に担う
我が代表の 逞しさ

長靴が水没しても
顔に泥が跳ね返っても
一度やると決めた女の意地
我が代表の 逞しさ

有機無農薬栽培なども
それは物凄い苦闘があるが
そのまえに
土を作る苦闘を
畑を準備する苦闘を
誰も知らず
誰も気付かず

農業とはね
地下の歴史無くして
地上の物語は
在り得ないのだよ








3.先達

地下の歴史 地上の物語
もっと勉強しよう
先達の営みを
調べに行こう




土を掘れば
歴史が現われる
太古の 開拓の 悲劇の 苦闘の
埋もれる時間が
顔を出す



道具を見れば
汗が匂う
希望の 挫折の 覚悟の 悦びの
格闘を重ねた汗と垢が
漂ってくる



根を掘れば
手間が分かる
愛情の 期待の 慈しみの 尊敬の
静かだが絶えることない
手間が目に浮かんでくる



土を見れば
謙虚になれる
自然の 科学の 現象の 反応の
混沌壮大な摂理に対し
自分の無力が謙虚にさせる



機械に会えば
挑戦が見える
なにが一番辛かったか
なにを一番したかったか
立ちはだかる現実にひるまず
知恵と知識で克服した
先達の挑戦が
見えてくる





懐かしい!
これ トラクターですよ。
イギリスに住んでた時
こういうのが実際に
デモンストレーションしてました。
「機関車 トーマス」にも
このキャラクターありますよね。
産業革命後の
蒸気機関トラクターです。

一定速度を得るための
出力調整装置(ガバナ)が
むき出しで
オレが機械の原点!
と訴えてきます。
「バックトューザフューチャーV」で
ダグが乗ってきた機関車の上部構造も
これを参考にしてると思います。


昭和20年代 終戦直後

空冷で大きく重い

水冷ディーゼルが確立

効率的設計になる

昭和30年代

今でも通用するStd.機種

昭和40年代

洗練されてきた ポルシェ

第2次大戦の頃から
昭和40年代にかけて
アメリカやヨーロッパで
発達してきた
トラクターたち。
ほぼ同じ出力レベルながら
コンセプトがまとまるのに
こういう変遷が必要でした。
でも欧米の設計に一貫していることは
「まず必要なモノを造ろう」


国産 昭和20年代

やっと乗用型 登場

国産 昭和30年代 コアは耕運機

まだ空冷が目立つ

国産トラクタの変遷を見て
決定的な差を感じる
「これしか出来ないから」
出力レベルも低く
部品も華奢(きゃしゃ)
なにをしようとしたのか
なにがしたかったのか
「グラマンに負けた三菱」を
覆せない日本がそこにある

「島国日本」
この分野も
例外ではなかったみたい。
くやしいけど、認めざるを得ない。
耳目を広く
ポリシーを明確に!
わたし達への啓示と受取り
気を引き締めます。







4.時の虚ろい




旧三菱大夕張炭鉱
メロン産地の視察なのに
つい虚ろな現実に
目が行ってしまう。



中学生の頃
最後のSLを追いかけて
追分から夕張を
徘徊してました。



特に大夕張鉱は
さすが三菱
引込線だけじゃなく
旅客輸送まで
自前



どう?
匂いまで感じますか?
木の背もたれ
感触を思い出しますか?
この座席一つ一つに
座った人が居て
話してた人がいる




学生寮の後輩だった M木くん
彼はここの出身
酔って歌ってたのが
大夕張音頭
そして彼の実家も
ここからそう遠くない
でもいまは跡形も無く
原野化していた



M木くん
君はどこかで
夕張の報道を
聞いているのだろうね







5.一会




上品なおじさん
「土の館」
ススッと寄ってきて
さりげなく話し掛けてきて
事務所へ案内されて
気がつけば1時間。
たくさんの資料を分けて頂き
「土は必ず応えてくれます」
「だから あきらめないで」
「土つくりを続けて下さい」

スガノ農機 前社長
菅野祥孝さん
ありがとうございました
(プラソイラ 安くしてネ)





もう7年も前に なりますか
まだ技術者だった頃
密かに北海道を内偵した時
ある内偵先から紹介された
新規就農の先輩
ある内偵先はリタイアし
こちらの先輩は順調に定着
なんと後継者まで
栄枯盛衰の生々しさ

それで
こちらのご夫婦
ものごとの価値観や
事業感覚が
なにより夫婦観が
わたし達の指標となってます。

「大きな声で喧嘩できる夫婦」
「お腹の底から笑える夫婦」
「達成感を共有できる夫婦」
「お金は大事」
「でも夫婦はそれ以上に大事」


収入ゼロで
いやマイナスで
奥さんを土方にさせられますか?
奥さんは土方になれますか?
覚悟のポイントを
授けてくれたご夫婦です。

中富良野町 長山さん夫妻
ありがとうございました。
(その覚悟のポイント、大正解です)





個人販売の先駆者
年間5千件の取扱い
しかもクロネコの展開が
完成するや否やの
宅配黎明期に
独立独歩で漕ぎ出した

販売戦略とか 経営戦略とか
普通の農家から得られないお話
当初30分の約束にもかかわらず
気が付けば 2時間も
訥々と聞かせてくれる

「経営の柱を 根気強く確立する」
「流行より 地道な品質向上」
「土作りを怠らない」
「投資効果は 5年我慢して」

「自分達の物語を大切に」

自分で積上げてきた凄味
情報に流されず
経験と洞察で
情報を生かす
シンプルな商品構成と
裏づけある価格設定

留寿都村 玉手博章さん
ありがとうございました
(迷いが吹っ切れました)





ばあちゃん
レパートリー 400話
「…だったとさ」
「はい、おしまい」



死んだばあちゃんを思い出した
実家が商売していた頃
ばあちゃんが家事を
手伝いに来てくれてた
毛糸の手袋を編みながら
「…だったとさ」
「はい、おしまい」

と 石炭ストーブの脇で
話してくれた。



我が家はまだ
おしまいになるわけには
いきません
…悪いけど。







今月もありがとうございました。

「一期一会」
使い古された言葉
でも意味を違って使ってた
すなわち
「一生は一つの出会いから」
じゃなくて
「一生とは一瞬の積重ねである」

いまこの瞬間は いましかない
いまを大切に感じるから
次が見えてくるし
次の瞬間の大切さも変わってくる
それがいつの間にか
一生に為っている
しかし一生とて儚い一瞬



ねっ、深いでしょ?
この言葉は 昔の上司が
座右の銘として
伝えてくれたもの
その意味までは
教えてくれなかったけど
たぶん
自分の一生で感じなさい
ということだったのでしょう。
その方は いまでも
我がふあーむの
強力な応援団です。



流行に流されず
常識に飲まれず
10年先でも通用する
揺るぎないこども達を
わたし達二人で
つくっていきたい
二人で一緒に
歩んでいきたい



「一会(いちえ)」
儚いからこそ
大切な瞬間
我がふあーむのこども達が
一会の引立て役になれるなら
わたし達二人の歩みは
完遂されます

それではまた来月
お会いしましょう





 
発行    編集局 制作責任 小柴孝志
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