小柴家の風景
'05年10月 「まさに天佑」
お元気ですか?
北海道より 小柴です。

朝夕めっきり冷えるようになりましたね。
天気予報で最低気温を見ると
全国的に10℃を切り始めたようです。
彼岸花が咲くのを合図に秋が訪れ
「暑いなぁ!」と言っていたのが 随分前のように感じる。
いまはそんな感じでしょうか?

当地北海道は冬の序章を迎えております。
紅葉、初霜、雪虫、初氷
そして 初雪
山々は衣替えに大忙しです。
から黄色、茜色、そして一瞬の水墨色ののち
純白になります。



先月は 「収穫悲喜」 をお伝えしました。
うまく行ったこと、行かなかったこと。
嬉しかったこと、悔しかったこと。
そんなことすべてを含めて 農家なのだと
少しだけ実感しました。

さて今月は秋仕事について お伝えします。
農家にとっての秋仕事とは
来春の仕込み作業を意味します。
来期の成否を決める仕事です。
「収穫悲喜」を味わって ほとぼりが冷めないうちに
次の仕事に活かします。



されど秋は雨が周期的にやってくる季節。
年によっては 秋の長雨 も出現します。
そうなると畑はぬかるみ 秋仕事は出来ません。
秋の天候次第で 来年が左右されます。
そんなワクワクドキドキな秋仕事を
「まさに天佑」と題して お伝えします。
どうぞお楽しみください。






1.まず計画、そして



秋仕事 っていったいどんなの?

堆肥仕込み手伝い 150ton
ハウスビニール収納 45m×5棟
ハウス資材収納 45m×5棟
暗渠溝掘削 延べ320m
籾殻充填 延べ4ton
暗渠覆土 延べ320m
堆肥散布 45m×5棟
土壌改良材散布 45m×5棟
耕起・整地 45m×5棟
心土破砕 100m×110m
収納庫搬入・設置
農道整備 延べ150m
機械洗浄・整備 2台
棚卸し
全収納完了


大雑把に主要業務はこんな感じです。
それぞれに段取りと始末が付いて来ます。

新規参入の大変さは
作業環境や圃場を ゼロから整備することです。
こうした経営基盤を整えるまでの数年間は
設備投資と経費、そして損失が 発生し続けます。

その間を持ち堪える経営体力を
借入金で充当するか 自己資金で賄うか。
そこがカギとなります。



ということでまずは 堆肥仕込みのお手伝いから。
すでにご紹介の「中屋農園」
我が家から17kmのアスパラ農家へ通います。
地域の籾殻を集めまくり 150ton。
ダンプ2台でピストン輸送です。



大型免許と建機免許
どちらも重宝しています。
「なんでも自分で やらねばならぬ」
(行かねばならぬぅ〜)
これは農家の基本です。
そのためには合法的資格も要るわけで
雇用対策の税金で取らせてもらった資格は
まっとうな活用を遂げております。







2.スポーツの秋、文化の秋


「世界中の晴天を集めたような…」
東京オリンピック開会式の実況のように、10月は本当に良く晴れました。
そんな中で地域のスポーツ大会や文化祭が催されました。









我が家の3匹の子豚は、揃って持久走大会に選ばれました。全町大会でみんな3〜5位に入る健闘ぶり!





北海道は車での移動が多いので、子供の体力は実は衰え易いのです。
静岡で競争にさらされてきた我が子たちは
北海道ではそこそこのレベルに達しております。






3.Main Events



これだけを見ると
何をしているのかわかりませんよね。
ちょっとその前に 簡単なレクチャーを。



「じゃがいも」の 作付断念
「かぼちゃ」の 販売断念
今年の大きな反省項目です。
いずれも畑の排水不良に起因しています。



ここは減反政策で生じた「転作畑」
もとは田んぼだったんです。
いまでも構造は田んぼのままです。
田んぼは「保水性」により 水張りを可能にします。
一方で畑は「排水性」により 乾燥を可能にします。
それぞれの目的にあわせて 求める地下構造は異なります。


私達の命題
「地面下80cm以下まで地下水位を下げること」
「最小の設備投資で 最大の効果を上げること」

主たる方策
「有材心土地改良耕と心土破砕」

そして次ような光景へとつながるのでした。
暗渠工事の始まり はじまり〜、パチパチパチ。





工程 1
「幅40cmの溝を地面下100cmまで掘る」








天気が良いうちに 暗くても掘ります。
いちど雨が降れば 2日はロスします。
溝掘りバケットという細長い手先で
深さ1mまで爪を入れて掻き上げます。
1m って、かぁなぁりぃ 深いですよぉ。








工程 2
「疎水材として 籾殻を40〜50cm充填する」




  
 




工程 3
「溝を埋め戻し、作土で覆土する




スコップをふるったのは 決して我が代表だけではなく
あくまで夫婦二人して 力をあわせていました。
誤解なきよう。

しかしながら 目標が明確になった時の女性の勢い
いやいや いざ開き直った時の女性の強さ
頼もしくも 恐ろしや
末恐ろしい 我が代表…
(もう 恐ろしい?)




工程 4
「心土を破砕し 排水路に連繋させる」




くろがねの輝き
鍛造部品の力強さと しなやかさ




これがサブソイラー
暗渠排水路につながる無数のクラックを作るのがこの機械。地面下30cm位にあるカチカチの防水層をバキバキに割って浸透性を上げて、暗渠排水路へ導きます。                      







まさしく畑に爪が刺さり
トラクターが引っ張ります。
当然もの凄い けん引抵抗で、我が家の中型トラクターでは負けてしまいます。でも細かい油圧昇降で地盤を持ち上げては割る、を根気強く繰り返します。                                      





工程 完了



畑全面にわたり 心土破砕を行います。
御覧のように破砕した後は 地盤が砕け盛上がります。









4.土壌改良



畑は作付した時から疲れ始めます。
栄養や土壌菌が偏り始め、病原菌に繁殖の余地を与えます。土の中に善玉菌を増やすことで、健康な作物が育ちます。




   



まず堆肥を搬入。
ここでも軽トラが大活躍です。
我が家はまだ堆肥の内製は出来ないので
アスパラ「中屋農園」から分けてもらいます。
似たような土壌で苦労されてきた中屋のじいちゃん
それだから尊敬できる知恵や工夫と
分かり合える気脈があります。



籾殻で秋ザケをEM発酵させた
ヤクルトの匂いがする堆肥。
窒素に加えマグネシウム亜鉛が豊富。
善玉菌と有機物、微量要素をまとめて畑に移植します。



さらに善玉菌の繁殖を促すために
エサや棲家になる資材を投入します。
たとえば 米ぬか。
炭水化物アミノ酸が多いこの資材は
発酵のエネルギー源です。
たとえば 貝がら粉末。
カルシウムシリコンが多いこの資材は
土のphを長期にわたり安定させます。

流亡した成分を畑に戻し 繁殖環境を安定させ
善玉菌の出す色々な分泌物と 善玉菌を呼び込む根の分泌物で
自然が求める健全な生育環境を整える。
これが有機栽培の基本です。



作物にとっての良い環境作りを 最優先に考えます。
私たちは呆れた開き直りも
偏った決め付けも致しません。
あくまで 作物を主役 に考えていきます。







5.追込み


ハウスの片付けを 急ぎます。
ついこの間ビニールを掛けたと思ったら
もう降ろす時期だなんて。
1シーズンは本当に早いです。



やっと収納庫を手に入れました。
農業資材の仕舞い場所に 本当に困っていたのよ。
これで片付けが 一気に加速するぞぉ。



懸案事項の 農道整備。
これもやっと 手を付けられました。
掘れた轍を採石で均して 高速道路並みになりました。
(ほんとかい?)



毎年恒例の研修会もありました。
恒例の「新規就農者」対象です。
でも私達は正確には「新規参入者」です。
行政上は農家子弟と同じに扱われます。
え〜!? これは無理でしょう〜!

高校出てすぐ経営基盤を受け継ぐ者と
社会経験を持っても基盤を持てない者とでは
接点はなかなか ねぇ〜。
一つの会で同じテーマを半日で済ますのは
ちょっと現状無視のような気がするな。
かわいそうに暗い顔して帰る新規参入者たちを
主催者は見てたかしら?

昨年の研修会でも同じことを感じましたが
行政の実績つくりが目的と言われても 仕方が無いでしょう
もっと本質に即した対応を期待します。








今月も有難うございました。
なにが天佑だったか、お分かりいただけましたか?

くどいようですが
秋仕事は天候次第です、本当に。
まして私達のような新規参入者は 圃場改造が必須でして
それは土が乾いていないと 出来ないのです。



新規参入にあてがわれる圃場は
低地力・高水位。
地元農家が手を付けないで残っている土地。
その圃場改造を秋に出来なければ
翌年をもう一度 棒に振ります。
そうやって3年で自己資金が枯渇するか
経営不振(不能)で負債返済が出来なくて
あえなくリタイア。
もし指導農家に恵まれなければ より最悪。
これが
「新規参入 失敗の方程式」



私たちは といえば
1年目はぼちぼち、まだ大丈夫です。
そして反省を活かすチャンスに 恵まれました。
考えていた圃場準備を 完了しました。
基盤未整備のなかで よく圃場準備をやりました。
それは本当に 好天続きのお陰でした。
まさしく 天佑神助 でした。

水よ 引け!
土よ 乾け!


来春の雪融けの様子で この結果が占えます。



秋仕事もプレッシャーがきつかったぁ。
しかし、けっこう楽しめる仕事でもありました。
出来上がりの姿を想い描きながら
自分たちの思い通りに準備していく。
これで来年の出来上りで結果を残せれば
農家が楽しくてしようがない。
すべての道はローマに通じる、もとい!
すべての工程はお客様の満足に通じる
これが
「新規参入 成功の方程式」です。

資金枯渇の前に 方程式の成立を証明したいと思います。
がんばります、これからも宜しくお願い致します。



我が家では鼻風邪が蔓延しています。
ストーブも点けました。
作業中もジャンバー着用が定常化しています。
鼻水垂らしながらの収納作業は もう少しです。
みなさんも風邪など召されぬよう
くれぐれも御自愛くださいませ。

ではまた来月お会いしましょう。





 
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