小柴家の風景
'05年 9月 「収穫悲喜」
お元気ですか?
北海道より 小柴です。

すっかり秋になりました。
「天高く 馬肥ゆる秋」
「一筆啓上 火の用心
おせん泣かすな 馬肥やせ」

私たちも 肥えています。
春から夏への 怒涛の季節を過ぎ
少しずつ周りを見渡す余裕が出てきた この9月。
3月に較べると10kg以上の減量をしましたが
この9月で少々取り返しております。

脂肪がついたというか 筋肉質になったというか
からだが少し 一息入れたという感じです。
秋の北海道は 味覚の宝庫。
食の誘惑がひとしきりです。
筋肉質ではなく やはり脂肪がつきはじめた
これが真相のようです。



先月は収穫の感動を お伝えしました。
「サラリーマンが モノを穫れるわけねぇべや」
と言われながらも 穫っちまった。
へへへ、どんなもんだい。

と思ったのも束の間、やはり失敗が待っていました。
やられたぁ、やっぱ世の中甘くはない
それなりの損失も頂戴しました。

というわけで 今月は
「収穫悲喜」と題して
本当の農家になったあとの洗礼について
少々お伝えいたします。
どうぞごゆっくり 御覧下さい。






1.昨年の悪夢?



昨年 9月8日、50年前の悪夢が再来しました。
あの「洞爺丸台風」に匹敵するヤツが来たのです。
今年も台風シーズンとなった途端に
同じ規模、同じルート、同じ日…
え? 同じ日かぁ?!
本当に嫌な予感が走りました。



西日本で猛威を振るった台風14号。
2日の猶予を経て いよいよ接近の兆し。
近隣農家、役場など急に忙しくなっている様子。
「おい! ビニール降ろしたか?!」
電話の向うで がなっています。

我が家のハウスには まだこども達が入っています。
ここでビニールを降ろすわけにはいかないよ。
でも潰されたら せっかく節約した資材費が
吹き飛んで お釣りまで来るだろう。
とにかく雨が降り始めた
「七人の侍」にあったような ドシャ降り
もう迷ってはいられない。



調査と検討の末、次が私たちの対策となりました。
対策1 : ビニール破損箇所の補修  
対策2 : 防風ネットで褄面の保護  
対策3 : 寒冷紗でハウス側面の保護
対策4 : ハウス肩スパンの追加補強
対策5 : 出入口の固定            



はたして どうなったか?
独自の導風処置はどう活きたか?



台風14号は 意外と衰弱早く
日本海での再発達もなかった。
ごく普通の台風として訪れ 去っていきました。
独自の導風処置は 10m/sくらいの風なら有効でした。
昨年並みの30m/sクラスなら どうか分かりません。
エネルギーとしては9倍に成長しますもの。
でも茨城県つくば市の 農業施設学会から取寄せた
ビニールハウスの風洞実験 に関する文献を
実証例として確認できました。
私たちだけの 貴重なデータとなりそうです。



まる2日間の戦闘配置が解除された昼下がり
かるい虚脱状態
圃場も早々に片付けて
帰宅したアパートの上を
超低空をブロアで飛ばされるように
雲が唸りながら飛んでいた。

まずは ひと安心…。







2.さようなら こども達


メロンたちも残り少なくなってきました。
秋を迎えて、尻上りに熟成レベルが良くなっています。秋のメロンは夏とは異なる美味しさを持っています。夏はさっぱり感とすれば、秋はこってり感。両方を試されたお客様は、分かっていただけたようです。






ごろっ、ごろっ。
まもなく力尽きる樹の陰から、残される子孫たちが姿を現します。根は深さ50cm以上、たぶん70cmまで伸びて水と養分を吸い上げます。最初は実を膨らますため、そして最後はエネルギーを充填するため。美味しさは充填されたエネルギーの塊。いのちの塊なのです。






これが最終便。
皆さんへお届けするのみならず、小柴ふあーむのこども達は市場をとおして全国へ旅立ちます。すべて送り出した安堵感と閑寂感。いっちょ前になるというのは、意外と寂しいものです。


















片付けます。
こども達のいなくなったハウスは、寂しいものです。でもオチオチしてると時間がなくなります。資材回収、残渣廃棄、ビニール収納、マルチ回収etc. 女性の気持ちの切換えは早い! 別れた男はすぐに忘れる…、じゃなくて去っていったこども達はすぐに忘れる。


蜂の役目も終りました。
今年は2箱借りて、メロンと南瓜の交配に働いてもらいました。スズメバチの襲撃にも耐え、ずっしりと重くなって引き取られていきました。それにしても蜂の世代交代って、スゴイ早く進んでいるみたいです。巣箱の周りは力尽きた働き蜂で満たされます。






それでも早くに穫り終わったハウスでは、後作のほうれん草がゆっくり育っています。養育日数は40〜50日。10月半ばから3週間ほどは、ほうれん草の収穫に費やされます。
それって、来期に向けた畑作りとバッティング! 雪が降るまえに(いや、降り始めても)もうひとパニック起きそうな予感です。





バリバリの遠州車!
コイツの働きが もっともあったかも。



20年前、初めて浜松を訪れた時の驚き
それは街中に「SUZUKI」が溢れかえっていた。
カルタスがあんなに走っていたのは
浜松だけじゃないかな。
もち北海道では少数派。
ワゴンR以外は あまり見ないのです。
(でもさすがワゴンR!というべきか)






3.ごく普通の かぼちゃ



どうです? 美味しそうに見えましたか?
ありがとうございます。
このこども達も ほんとに苦労して育ったんですよ。














初めての土地
そこは地力が低く、排水性も悪かった。
くわえてヒエが猛威を振るう土地。
昨年までの捨て作りの転作田から
急に畑作地に変えようとしても
やはり無理だったのかも。

発芽時に周りを取り囲んでいたヒエの怖さを
その時は未だ 知らなかった。





約7反の南瓜を守るべく、手でヒエを刈り続けたのは我が代表。ある株は本葉までいけず、ある株はヒエの壁に阻まれ。
それでも生き残りそうな南瓜1反弱に狙いを定め、最後の管理を集中しました。





















やっと順調にツルが走り始めたと思ったものの
やはり地力のなさ、ヒエの猛攻に抗しきれず
南瓜の勢いは失速しました。





ヒエから守り続けた 我が代表。
乾燥し終わった南瓜の何個かで
晩御飯にしてみたの。

でも、ダメだった。
皆さんにお売りしたい味は 得られなかったの。
決断にそう時間は かからなかった。
「一般流通品との 有意差はない」
これが 結論。



たぶん悔しいよね、悔しいはずだよ、きっと。
すずめの涙ほどの南瓜  出荷調整しながら
努めて明るく振舞う 我が代表。
夫としては 落ち込むしかなかった。
「済まない、結実させられなくて」

来年の準備は いまから始まっています。
同じことで悔しい思いは したくない。
レースをやっていた時と 同じ気持ちが蘇ってきた。
報われる苦労に置き換えられるよう
がんばろう っと…。





4.憧れの姿













早朝のアスパラ畑。
よく茂りながらも 非常に手入れが行き届いた茎葉。
いまアスパラを教わっている中屋農園の状況は
いつ拝見しても 素晴らしい。
すでに露地収穫を終っているけれど
いまでもMサイズ並みの萌芽が続いてるのです。



ここのオヤジさんは非常な苦労人。
「現代農業 9月号」に紹介されていますので、御覧下さい。
とても人徳のある方。私たちにも世話を焼いてくれる。
ノウハウや堆肥、機材の貸与を快く受けてくれる。
そのぶん、「いい加減は出来ない」プレッシャーも
キッチリ与えて来ます。
じつは怖い親父さん なのです。



これが宝の山。
飴色のダイヤ、至宝の堆肥です。この堆肥で育てたアスパラは、それは素晴らしい味。濃いね。生でポリポリ食べられます。
有機栽培ってごく当然にみんなやってますが、有機質をどのようなものにするかで差が出ます。





いまこの堆肥を種として分けてもらい、自分で増殖を図るべく挑戦中。うちの畑に発酵菌がうまく根付いてくれれば、皆さんへお届けするモノも すばらしくなるでしょう。






有機! 有機!って騒いで 久しい世の中ですが
普通の専業農家なら ごく当たり前のことなんです。
それをことさら吹きまくるマーケットの煽動に
流されてはいけませんよ。
畑に有機物が入っているのはあたり前で
有機栽培っていまさら 新しいことじゃないんです。
ほんとうの差は どんな有機物をどう投入するか。
どういう肥料とコンビネーションするか。

現場は世間の流行に惑わされず
もっと先を歩んでいます。






5.秋の日に




これ、我が家のベランダから。
秋の行楽シーズンに
毎週末SLが運行されるのです。
昼ごはんの時、うらの昆布駅から
「ブウ・オゥーーーーーーオゥ」
と国鉄独特の鳴らし方が聞こえてきてます。
(こ・く・て・つ・フォー! じゃないですからね)



ベランダで見る我が子たちに
機関士たちが 手を振ってくれるのです。
ドラフトサービスつきで。
汽笛の音が山あい隅々まで 響き渡ります。
こだまして 天然のエコーがかかります。
この感覚を想像できるあなたは
すでに40歳以上とお見受けします。
幼少の頃に刷り込まれた
抜き難いノスタルジーです。

C62の重連が疾駆していたこの線路を
いまC11が 介助付きで通過します。





ニシン御殿
こんな立派ではなかったけれど
昔のじいちゃん家の建て方を思い出しました。
昭和初期に建った北海道の家は
反り返った板葺き、波打った板ガラス、寒い土間、井戸etc.
ガタガタ鳴る縁側のガラス戸は 隙間だらけ。
縁側というより 張り出し廊下。
隙間から入った雪が 縁側に吹き溜まりを作ります。
だから冬は 窓一面にビニールを張付けしのぎました。

う〜ん、懐かしい。
旭川市9条11丁目、測候所の裏にあった
じいちゃん家のはなしです。






今月も有難うございました。
収穫悲喜、如何でしたか?

そろそろ今年度の集計が進んでいます。
自分でExcelを使い記帳していますので
いま時点の経営状態が分かるのです。
けっこう具合悪くなります、見ると。
ものすごいプレッシャーを受けます。
というか、落ち込みます。

いったい資本金がいくら必要なのか
新規の人しか感じない疑問です。
我が家はすでに 2回増資しました。
ありゃりゃ。



これから新規就農される方へ。
農家の辛さは
お金がなくても投資しなければならないこと
でないと目前の作物が 全滅します。
全滅か 追加投資か
そして結果は Some or Nothing
(All じゃないんだよ)

投資しなければ何も変わらない
だけど投資したからといって 解決できるわけでもない
必要条件であっても 十分条件は満たさない
数学的に言うと そういうことです。

一つ一つの核を大切に暖めて
増殖させ 膨らませて
得はしなくとも 損をしないように配慮すること
どうもこれが大切なようだと
確信し始めております。
失敗しても納得のいく失敗をしましょう。



今月もどうも有難うございました。
こちらはいよいよ冬へのカウントダウンが始まりました。
初雪までのあいだ 畑の改良を進めます。
また重機マンになって バックホウを振るいます。
堆肥の0次試作も始めます。
ハウスの土壌改良もやります。
忙しいや。
皆さんから頂いた売上は原価に回らず
来年準備の投資に直行します。
有効に使いますね、ありがとうございます。

ということで 内地でも秋が深まることでしょう。
南瓜のご案内ができなかったことをお詫びするとともに
皆さんも季節の変わり目で風邪などひかぬよう
くれぐれも御自愛されるよう申し上げて
今月の結びと致します。

ではまた来月お会いしましょう。





 
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