小柴家の風景
'05年 4月 「初年度 始まる」
皆さん如何お過ごしでしょうか?
北海道より 小柴です。
いま北海道では ちょうど桜前線が上陸し始めました。
皆さんのところでは お花見はどうでしたか?

そういえば今年のスギ花粉は 相当なものだったそうですね。
杉美林のまち 天竜で暮らしていた私たちにとって
スギ花粉のない北海道の春は 至極快適です。
花粉症の方たち、申し訳ありません。

その代わり 黄砂があります。
工藤静香「黄砂に吹かれて」
あれ楽曲は中島みゆき ですが
なるほど彼女は 札幌で黄砂にくしゃみをしながら
創作したのでしょうか。



4月は多岐にわたる営農準備で
とても忙しい ひと月でした。
生産を始めるため圃場準備が大きな課題ですが
それに合わせた生活環境も整えなければなりませんでした。
研修の1年とはガラリ変わった生活が
スタートしたのです。

今月はそんな状況を
「初年度 始まる」
と題して報告致します。
どうぞお楽しみください。



1.まず引越し

町営住宅に入りました。
2LDKを5人家族でシェアします。良く言えば家族のつながりが緊密な生活、つまりスペースに余裕が無いという事かな。でも子供たちは山荘より里の生活が嬉しいようです。だって友達と遊ぶのに自分の足で行き来できるんですから。自由度と機動性が格段に向上です。




期待に胸が膨らみます。
新居の鍵を開けるとき、なぜ鍵穴を覗き込むのでしょうか? 気持ちの顕れですね。鍵穴の向こうに拡がる未知の世界、はたして期待に応えてくれるのでしょうか?






彼らが見つけたもの、インターホンです。
初めてです、こんなもの見るの。しかも向うの声が聞こえたりすると、驚天動地の沙汰です。でもね、北海道に来てインターホンを始めて使うとは、順番が逆ですよね。少なくとも鹿とか熊はインターホンを押しませんしね。あ、そういえばキタキツネ、奴らなら化けて人間をだますかも。なるほど、それなら説得性がありますね。そうか、そうなんだ。



                     

住宅は函館本線沿いにあります。
国鉄時代にはここを10両編成のディーゼル急行や特急が疾駆し、C62重連が爆走していました。今は昔、当時の情景を幻影のように思い浮かべながら、時代の変化を噛締めます。
引越し準備です。
またもや段ボールに埋もれた生活です。我が代表、そのプレッシャーに早くも疲れています。が、彼女にとって結婚以来これが7回目の引越しです。なんとか経験で乗り越えてくれるようです。こんなとき、男ってホントに足手まといになります。その無力さに自己嫌悪しきりです。




高床の家からは、こうやって搬出します。
雪は悪い事ばかりじゃないんですよ。それを逆手に取れば結構いろんなことに役立つんです。雪中引越しは、フライングデッキなんか不要にします。






運ぶだけは運んだゼ。
いったいどこに寝るんだ? そう言いたくなる光景です。実際、みんなが布団に寝られるようになるまで、1週間を要しました。それまでは段ボールの間、ソファの上が寝床です。




                         
お腹すいたねぇ。
引越し当日はお昼ご飯をとれませんでした。朝7時に朝食をとってから夜8時まで、我が家の子供たちは実に辛抱強く堪えてくれました。引越し作業員が自分だけ勝手に昼食をとる間も、文句言わずに頑張ってくれました。晩御飯はまちのラーメン屋でした。このがっつき方、迫力です。みんな、頑張ったね。お蔭で引越しは何とか終わったよ、ありがとう。


2.新生活スタート

山荘での生活も終り。
ちょうど1年前に越してきて、幸いにもこの山荘を借りられました。季節を一巡し、この地の不便さもいつの間にか生活の味わいとなり、それなりに心地よくなってきた時でした。






いざ山荘を離れるとき、初めて訪れたときのナーバスな気持ちやこの一年間の光景がフラッシュバックしてきて、家族みんながちょっと無口になっていました。でもそれぞれの顔つきは以前に較べると精悍で逞しくなり、物事を淡々と受け止める顔になっていました。






子供たちにとっての新生活、それは学校へ歩いて通えるようになった事です。小学校まで1kmちょっとのところになり、自分の足で通えます。それはすなわち、友達とも自由に遊べるようになったという事でもあり、それが一番嬉しかった事のようです。



山荘とは気候が2週間は ずれています。
山荘付近はまだ3m以上の残雪でも、里の排雪場はすでに融雪が本格化、巨大な雪の塊が崩壊し始めています。その光景はさながら南極の氷床が割れるが如く。マニアックな春の風物かな。

3.営農開始

今冬の積雪の多さは既知のとおり。
4月になって融雪ペースが鈍り始めました。「おかしい」と思い地際を確認して納得。融雪水が畑から逃げられず、雪の下で湖を作っていたのです。この水は温度も低いので融雪の邪魔になります。この場合の対応は一つ、水を抜く事。多少お金がかかっても仕方ない。排水溝工事が必要です。




重機を借りたついでです、雪割りもやっちゃいます。
固く締まった積雪を崩しほぐし、空気に曝してあげるだけで、融雪がぐんと進みます。やれる事は何でもやります。この雪が無くならなければ、私たちの営農は始まりません。



圃場の測量です。
施設園芸農家は畑にビニールハウスを設営し生産拠点とします。建物を建てるのです。これから先の生産性を見越して設計しなければいけません。その根拠となるもの、それが圃場の形状なのです。自分でやる事で数10万円のコスト削減が出来ます。「ピタゴラスの定理」とか「三平方の定理」など、農家は総合技術が求められます。

雪の融け具合、こんな風に進んでいきます。

4月12日、積雪60cmくらいで融雪が止まった頃。
風景はまだ冬の様相。









4月15日、圃場の土が顔を出しはめた。
でも地面はグジャグジャで、足を踏み入れるとすねまでぬかるむ状態。




4月20日、ほぼ全面の土が露出。身処置の周囲と較べると差は一目瞭然。






4月24日、本格的に乾き始める。周囲にはまだ雪が残り水浸し。





深さ60cmの排水溝が、これだけ水に充たされます。どんどん抜かなければ、融けるはずがありません。


4.いも

これは、種いもです。
種いもは厳重な管理のもと、品種維持と病害防止に努めています。種苗段階の品質はその何千倍もなる製品品質に関与します。出来の悪い工作機械から高精度な製品が出ないのと一緒です。




我が代表、カレーライスを作る。
いやそうじゃなくて、種いも切りの様子です。いもにも頭と尻があり、頭を中心に切り分けると発芽が活発で種いもの分割も向上します。いもの頭のこと「頂芽」といいます。


5.ハウス設営

記念すべき第1棟、私たちの話を聞いて理解を示してくれた先輩農家からのお裾分けで建ちます。
まず地中埋設部の腐食を処理すべく、錆落しをして防錆塗装をし直します。都合300本強、すべて手作業です。面倒でもこの工程を尊重すれば、今後10年のハウスの持ちが違ってきます。コスト削減を使い切る為の大切な作業です。





ハウスで入口の排水溝は、穴開き配水管を籾殻でくるんで埋め戻します。作業性確保はもちろん、透水性の維持が可能になります。









機材を搬入し、設営作業開始。
発電機、インパクトドリル、高速カッター、などが必要です。数百kgの機材を手で運ぶのは苦労です。





と思って軽トラで圃場に進入した途端、つかまりました。亀になりました。まだまだ進入は早かったようです。これで2時間はロスしました。幸いにも近所のおじさんが「おーい、なにやってんのよぉ」と車で乗り付けて、救出してくれました。ホントにありがたや。










100mの奥行がある現場に、資材を人力で搬入です。約300本のパイプはじめ、総量500kgの鉄鋼資材を肩に担いでぬかるみを歩きながらばら撒きます。




地面に穴を開けてアーチパイプを差し込みます。差込み深さは地中40cm。インパクトドリルで根気強く穴を開け続けます。






両側のアーチパイプを差し終りました。
今回は中古パイプを分けてもらったので、少々傷みがありました。パイプの先端がバランバランです。でも実用上問題ありません。充分です。







出来たぁ!
主骨格のアーチパイプを天頂部でジョイントして輪郭が出来上がります。工程上の1stビッグステップです。まずひと息。






そして固定作業に入ります。
アンカーを打込みワイヤーロープを張ります。このロープにバンドを締結し、アーチパイプを上から押さえつけます。






筋交い、です。
家の壁に入っている筋交い、と意味は同じです。ハウスの両端は風をまともに受けて倒れたがるので、それを内側から支えます。角度は45度、ベストバランスです。






ビームを取り付け、各アーチパイプを締結します。
一本ずつではフニャフニャのアーチパイプも、こうしてお互いにつながりあう事で力を分け合い支え合い、強くしなやかになります。






プライングです。
土を深くから起こして空気にさらします。こうして乾きを促進します。トラクター作業は豪快さばかりの印象がありますが、ハウスの際どいところまで機械をすり寄せて何100mも真っ直ぐに進むという、実に繊細な側面が多いのです。



そしてトラクターは帰っていった。



4月末、私たちはここまで進んでいます。




今月もありがとうございました。

営農初年度なので 手配・調整業務が多く
結構な金額がかかる事案を
短時間で決めていかねばなりません。
果たして回収できる設備投資なのかどうか
初年度の私たちには 未知の領域です。



メロンという難しい作物は 初めての土地
この土地が私たちの仕事に どう応えてくれるのか
我が代表と二人で 思わず土を手に取ります。

なにかのドキュメンタリーで よくこういうシーンが出ますが
ほんとに自然に こういう仕草が出てきます。
いやこうせずには いられなくなってくるのです。
手の中で土をほぐし 「なんとか 上手くいって」
お願いしてしまうのです。

そして支援農家の方々。
今度の畑の地域に 2軒の施設園芸農家がいます。
この2軒が私たちに有形無形の支援を下さるのです。
町営住宅に入居する際の保証人も
この方たちが受けて下さいました。
まだ機械も経験も持たない私たち
それでも 「あんたらは本気で農家しようとしてるから」 と言って
一緒に頑張ろうヤと 手を貸してくれます。

蘭越町内で離れたところでも
中古ハウス資材を分けてくれる人が現れます。
老齢で規模縮小して出てくる資材なのですが
みんな鵜の目 鷹の目で狙っているのです。
そんななかで私たちに分けてくれるのは
「やる気のある人に活かしてもらいたい」
つまりその方たちの気持ちを資材を通して受け継ぐ
そんな意味合いがあるのです。

ハウス設営も一段落、と思いきや
さらに45m×3棟の資材提供があり
嬉しい悲鳴を上げることになっております。
今年のメロン、すべてハウス栽培が可能になりそうです。
一方でじゃがいもが、ちょっとまずそう。
雪融けが異常に遅くて畑が準備できず
せっかく切った種いもの状態がよくないのです。

こんな良くない話も含めながら
来月報告は緑色の写真が増えているでしょう。
ということで どうぞお楽しみに!
我が代表も慣れぬ土木現場作業に奮闘しております。
御声援宜しくお願いいたします。

では皆さんも どうぞお健やかに
小柴でした。


 
発行    編集局 制作責任 小柴孝志
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