いよいよ6月となり、内地(?!)では梅雨入りを控え空気が暑く重くなってきたことでしょう。小柴家はいまも北海道ニセコ高原で生きながらえております。当地の5月はいささか天候不順で、農家の作業日程は狂いがちでした。本来であれば本畑に苗を降ろしたり播種したり、良い意味での忙しさになるのだそうですが、今年は晴天が3日と続かないので、畑を起こしては雨に打たれの繰返しで本畑が乾く暇が無く、お蔭で各作物の仕事が一気に重なり始めました。各農家では半日の決断遅れでその後1週間の工程を狂わすなど、シーズンインしたばかりなのに既に差が出始めています。さてそんな状況はまだ傍観者ながらも、今月の報告をして参りたいと思います。(いずれ当事者になるのですが…)

1.アスパラ

研修先ではアスパラを作っています。私も収納計画にアスパラを盛り込んでいます。アスパラは「ハウス」物と「露地」物とがあります。「ハウス」は4月から出荷していますが、5月に入りいよいよ「露地」の出荷が始まりました。「ハウス」の特徴はブリの良さと味の濃厚さ。例えば刈取り直後の樹液を吸うと、まるでサトウキビのような甘味があります。

一方「露地」は雪に乗られている時間が長いことから歯応えがシッカリとして調理後に色鮮やかになります。アスパラは苗を植えてから3年後に始めて収穫できる我慢強い作物で、同じ株から10年くらいは収穫できます。グリーンアスパラやホワイトアスパラ、いま小柴家が食している不良品アスパラは形を除いて市場では特上のもので、ネット検索によれば銀座のレストランでは一皿¥1,500で提供される素材です。

特にホワイトアスパラはいままで経験したことのない風味と甘味で、少量の塩かマヨネーズで一皿平らげられるようなものです。こんな作物を手頃な価格で皆さんに提供出来るよう、近く成りたいと思っております。


アスパラ

           1ヶ月1万円生活!?                   アンヌに見守られて


2.水稲

私の研修先は湯里「日比野農園」に加え目名「伊藤農園」があることも、先月報告しましたね。その伊藤農園から応援要請が参りました。田植えです。いくら機械化されているとはいえ、苗の準備や補給は人手に頼ります。まして立派な苗を育てるほど補給は男手作業となります。今回、伊藤農園の御好意により田植機体験試乗の機会をミッチリ与えられました。雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、照リ返シニモ蒸シ暑サニモ負ケズ…、機械上でひたすら苗の補給に努めます。

田植え 4WD
ところで田植機は4輪駆動車です。業界人には当たり前ですが、一旦見ると暫く見入る代物です。農家の方たちは目に見えるものしか信じないのですが、そんな業界相手に失敗を罵倒嘲笑されながらも挫けずモノを形にしていかれた技術者の仕事は、その困苦が想像に難くありません。田植機上で技術者の苦労に思いを馳せジーンと来る私は、やはりちょっと違う視点の持ち主かも。でも機械関係の方々、田植機の四輪駆動機構や田植モジュールの平衡維持機構は、一見の価値がありますよ。

3.メロン
いよいよ本命の登場です。生産中のメロンは赤肉ですが、研究試作として青肉も試されています。研修先の農家は地域随一の生産技術を誇ります。そのノウハウを無償で譲り受ける機会を与えられています。特にこだわりなのが「苗立て」。種から苗を生やし本畑へ降ろすのですが、研修先「日比野農園」の哲学は「苗8割」。育苗中に甘やかすと作物は自分で育つ力を失うが、多少厳しく育て基礎が出来ていれば作物が環境の変化に自分で対応できて成長していく。なんだか人間の育て方を聞いているようです。苗を本畑に降ろすのは人間でいうと二十歳前後。フォーメーションを整え伸張し蕾を準備するのが30代。結実し膨らませる40〜50代。この先60代で外観が完成し70代から円熟していく。人間の成長(というか一生)と似ていますね。身に詰まされます。人間も偉そうにしておりますが、結局は作物の一生と何ら変わりは無いわけです。例えば雌花のふくよかさに生物のセクシーさなんか感じるのです。雄花の素朴さに引換え雌花の華麗でグラマラスな容姿。いや、結構妖しいのですよ雌花の姿って。


育苗中


伸張加速

 


雌花




おめでた(^-^)


馬鈴薯


かぼちゃ

 


とうきび


4.畑の風景
いま育てているのは、「かぼちゃ」「馬鈴薯」「とうきび」の他に「甘蕗」「西瓜」など。先の主要品目も同じですが、発芽で芽が土を破ってくる瞬間や苗が活着(畑に根付くこと)するさまなど、生命の神秘を感じずには居れません。一つの物理現象と捕らえればそれまでなのですが、その物理現象をまずは経験則でここまで整理統合出来たのは、先人たちの艱難辛苦があったればこそ。少なくとも私一代でこれだけの経験則や法則を整理できるはずも無く、これだけの人生を繰り返せる訳でもありません。微妙な変化を見逃さず次の展開のきっかけとする面において、前職(エンジン開発実験)の心がけが大変役に立ちそうです。ただ今回の相手は生き物ゆえ人間の勝手な解釈や自己陶酔は何の意味も無く、積極さと謙虚さを高次元でバランスさせることに営農技術の凄みみたいなものを感じ始めております。

5.生活は?

既に自然豊かどころか、自然の中にお邪魔している生活環境です。作業中や移動中に家の周囲、そこら中に充分自然を感じると言いますか、自然の一部として同化していくような環境です。雨の作業中にフッと空を見上げると雨雲の上に山がぬぅーっと覆い被さってきたり、地温が上がっているときの雨後は気嵐がブワブワァーっと圃場を駈け始め、上空に寒気が入った雨の時は典型的な逆転層(地学を思い出してください)が出現したりします。とにかく光の陰影とかコントラストが半端でなく、その陰影に身を包まれている圃場上の自分たちが、なんとも小さく感じる環境なのです。


羊蹄


気嵐

 


逆転層


しかし都市部からは年寄りたちが自然満喫気分で訪れて山菜採りに精を出します。他人んちの庭まで入り込み、山菜を採っていきます。でも今シーズン既に全道で14名が帰ってきません。先日も隣町から帰路を見失った年配者が当町の沢で見つかりました、冷たくなって。そういえば頭上にヘリコプターが低空でブンブン飛んでいたっけ。命より大切な山菜があるとは思わないんだが、そこがいわゆる都会人(?!)の感覚なのかなぁ。山菜採りの駐停車で目前の道道が渋滞するような、妙な活気があるのです。(でも美味いんだわ、ウドの葉のてんぷら、ウドの酢味噌、竹の子のお汁なんかね)




命懸け


まぁ、そういうわけで仕事で体を傷めながら、温泉で養生しながら、少しずつニセコ高原の雰囲気に馴染んでおります。40代で転進してよかったぁと思える時がありまして、それは体のきつさと順応です。きついんです、正直言って。でも2〜3週間毎に訪れる疲労のピークの一つずつを温泉に浸かり昼寝してかわしながら、以前感じた辛さを乗り越えているんです。そんな日々を繰返し、一日の終わりにビールを飲み干すマネをしております。(ビールは飲めず、発泡酒を通り越して雑酒で過しております)

それにしても、明るいうちに上がれるのは今のうちかな?いずれ地獄を見ることでしょう、ね。

今月もありがとうございました。家内や子供たちの順応に相当助けられながら、小柴家は前へ進められております。来月の報告もお楽しみに。

 
発行 小柴家応援プロジェクト 編集局 制作責任 小柴 孝志
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